2019
05.10

コンペ型クラウドソーシング「Topcoder」CEO「究極のフレキシビリティをコミュニティへ提供する」

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コンペ型クラウドソーシング「Topcoder」CEO「究極のフレキシビリティをコミュニティへ提供する」

Michael P. Morris, CEO of Topcoder _ Global Head of Crowdsourcing for Wipro, 2019

100万人以上が登録するコミュニティを管理するTopcoderは、コンペ形式により選ばれたソリューションを顧客へ提供しているクラウドソーシング企業である。プラットフォームの日本人登録者数は数万人に及ぶなど、日本とも馴染みが深い。2001年の設立以来、Topcoderは顧客評価も高く、国境を越えて活動を続けながらクラウドソーシングの認知に貢献してきた。その源はどこにあったのか。

 

国際チェス連盟の相互評価モデル

2000年にはテクノロジー業界の需要が爆発的に伸びていたが、エンジニアが不足しており、どのように高い技術力を持つエンジニアと出会えるかが課題だった。

「国際チェス連盟のモデルを参考にしました。チェスゲームのコミュニティには多くのプレイヤーが参加しており、相互評価がなされています。その中で特に印象的だったのは、評価に対する「プライド」です。プレイヤー同士で評価をシェアし、敬意も払っていました。そのようなモデルをソフトウェア開発にも応用できないかと思い、当社コミュニティを拡大してきました。当社プラットフォームではコンペ形式で技術者がアイディアを競い、課題解決のソリューションを迅速に作り出しています。このモデルを活用したところ。10,000人が登録し、その数は幾何級数的に伸びていきました。今はプロフィールや評価システムも導入し、コミュニティ側でもそのコンセプトは受け入れられています。」(Morris氏)

Topcoderのビジネスはプログラミングコンテストから始まり、今でもそれが続いている。当初は自社の従業員しか信用しない企業から抵抗があったが、19年間でそのような企業のマインドセットも変わってきた。個々のフリーランサーにとって選択肢が増えてきたのもビジネスを後押しするきっかけとなる。

「米国では50%以上の労働人口がフリーランスを選択しています。フリーランサーがコミュニティに登録すれば、自身の能力を様々な形でそれを活かすことができます。Topcoderが提供するのは究極のフレキシビリティです。それにより、レベルの高い技術者がいつでもどこでも業務ができるようになります。従来のモデルよりも収益を生み出せるモデルを構築し、それをコミュニティへ提供しています。」(Morris氏)

コンペ形式によるカスタマーサービス

国際チェス連盟のアイディアから始まったコンペ形式がTopcoderのトレードマークとなっていると言っても過言ではない。

「競争によりアイディアを生むのがまず重要です。また、当社ではTopcoder Xという外部システムのAPIを導入しています。Topcoder XはJiraやgetLabelなどのソフトウェアと連携しており、他社からTopcoder Xへ入ることができます。当社へお問い合わせいただければTopcoderのサービスをご利用いただけますが、お客様の中にはJiraを用いてTopcoderサービスを利用したいという方もいらっしゃいます。Microsoft社もお客様の一社ですが、例外ではありません。このように、お客様の要望に基づくサービスを提供しています。

当初はビジネスモデルのコンサルティングサービスを提供することで課題解決に努めました。クラウドソーシングのコミュニティへの参加を躊躇する方々もいましたので、そのような方々へコンサルティングサービスを実施してきました。Topcoderは、プロジェクトを確実に成功させるためにコ・パイロットというポジションを作り、各企業がコミュニティの最も強力で生産性の高いメンバーにアクセスできるようにしました。コ・パイロットはTopcoderの開発モデル、リソース、方法論などに精通しており、何が可能なのか、所要時間、コスト、そして各企業が何を考えているかを伝えることができます。プロジェクトの結果がどんなものであっても、コ・パイロットはプロセスの全期間を通してお客様と提携し、最も効果的な方法を明らかにするために精力的に業務へ取り組んでいます。コ・パイロットのポジションは世界中に存在しているため、グローバルであり、ギグエコノミーのアプローチをサポートしています。コ・パイロットが収益を上げ、高品質のプロジェクト成果物を納期通りにお客様へ提供することで、その業務がTopcoderのベストプラクティスと一致しているという認識も高めてくれました。また、近年ではTopcoderのコミュニティを使わないお客様へ、情報送信セキュリティや機密情報の保守について教育しています。クラウドソーシングへの疑問も耳にしますが、当社ではぜひ最重要タスクへ利用すべきだと考えます。さらに当社への追い風となったのは、クラウドソーシングに一旦関心を持つ人が現れると、その可能性が知られるようになることです。例えば、データサイエンスの課題に取り組んだ時は、2週間で有識者から数百の数理アプローチデータを受信しました。企業内部のチームで同じ能力を持つ人たちだけでそれを達成するのは難しいでしょう。同様のことがクリエイティビティにも言えます。テクノロジーの課題解決やクリエイティビティの分野で何かを生もうとしている場合、多様な知性が求められます。当社ではすぐにその多様性を提供できます。お客様が当社で公募して頂ければすぐにアイディアが集まりますし、それは従来のコンサルティングビジネスではできなかったことです。」(Morris氏)

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何がコミュニティにとってベストか

コンペ形式のビジネスだけではなく、教育にもクラウドソーシングを活かしているのもTopcoderのもう一つの顔と言える。特にコミュニティ参加者への配慮は顕著だ。将来はどのようなプランを描いているのだろうか。

「念頭に置いているのはTopcoderのビジネスモデルを簡素化し、お客様にとって使いやすい仕様にすることです。コミュニティサイドでは、参加者の集団がおり、オープンスペースがあり、多くの企業もいます。成功する上で重要なのは「何がコミュニティにとってベストか?」ということです。収益目的のビジネスは成功しません。Amazon社やeBay社はユーザーエクスペリエンスを重視していますし、コミュニティのエクスペリエンスがベストだということです。今は当社登録者の140万人のリタイア後の生活やキャリアパスについて考えています。Topcoderは今後のキャリアパスにつながる唯一のクラウドソーシング企業です。Topcoderコミュニティでは相互評価され、コ・パイロット、シニア・コ・パイロット、アドバイザーとしてキャリアを築くこともできます。これらは企業が今後3~5年生き残るうえで重要だと思います。」(Morris氏)

インタビュー後記

徹底したコンペ形式のクラウドソーシングにより、Topcoderをその名の通りトップレベルのソリューションを生む企業へと成長させてきたMorris氏。常にコミュニティの利益を考え、参加者のキャリアパスや教育の機会も考えているのも大きな特徴だ。今後の展開にも引き続き注目していきたい。

取材日:2019年3月

取材・文章:hongou

編集:n.takai