2019
07.11

P2Pレンディングのクラウド投資プラットフォーム「Ratesetter」コミュニケーション・ポリシーディレクター「政府と協力してイノベーションを起こす」

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P2Pレンディングのクラウド投資プラットフォーム「Ratesetter」コミュニケーション・ポリシーディレクター「政府と協力してイノベーションを起こす」

ratesetter

2010年に英国で設立されたRatesetterは、金融プラットフォームで投資家と借り手を結びつけるP2Pレンディング(※1)を展開している。政府と協力してレギュレーションの改革に取り組み、英国社会でP2Pレンディングによる金融サービスを定着させてきた実績を持つ。P2Pレンディングサービスを発足させたきっかけは何だったのだろうか。Ratesetterのコミュニケーション・ポリシーディレクターのBattersby氏に話を伺った。

※1 ”P2Pレンディング(ピアツーピアレンディング)とは、Peer to Peer レンディングの略語で、インターネットを通じ資金の貸し手と資金の借り手をマッチングする仕組みのことを言います。主にインターネットの発達とともに欧米で発達した個人間金融を指しますが、簡単に言うと「インターネットを介した個人間でのお金の貸し借り」と表現することができます。”
出所:CROWDPORT NEWS

1.バンキングシステムへの問題意識

「当社はバンキングシステムへの問題意識から2010年に設立されました。一般的に投資を行う場合は、2つオプションがあります。1つは銀行への預金です。金利は低いですが、比較的な安全に運用されます。もう1つは、銀行と同様のローンインベストメントです。投資リターンが良好ですが、変動が激しくリスクも大きいのが特徴です。Ratesetterはそれらに加えた他のオプションを提供しています。預金と同じレベルの安全性はありませんが、リターンは大きくなります。また、リスクはありますが、非常に小さいレベルに留まりますので、個人投資家がより多くの価値を受けられます。」(Batterby氏)

ローンインベストメントのコンセプトとともに9年前に設立されたRatesetter。現在は600,000人の顧客が登録されており、投資家は80,000人、借り手は250,000人となっている。現在は230人の従業員が活躍しており、人間の判断によりローン融資の可否が決定される。特徴的なのは、システムの自動化や効率化によって運営コストが下がり、投資家へのリターンが増え、借用者もより多くの融資を受けられるサービスである。ここに至るまでには、長い信用構築の期間が必要だった。

「大手銀行の顧客レベルに到達し、業界で変化を起こすには長い時間が必要です。この9年間、実績を出すことができてお客様の間では評価は高いので、お客様の望むものを提供できていると思います。この実績を踏まえ、将来はより多くのお客様が関わると確信しています。
また、借り手に関しては幅広いチェックを行います。まず、Ratesetterにお客様が来られ、申し込み確認後に、お客様のクレジット情報や返済能力を調べます。運用資金はRatesetterではなく投資家からお預かりしているお金なので、返済のセキュリティには注意を払っています。一方で、プラットフォームへ出資する投資家に対してもチェックは欠かせません。マネーロンダリングなどの犯罪も懸念されるので、投資家はどなたなのか、資金の詳細についても確認します。その点では銀行と同じレベルのIDチェックをしていると言えます。
」(Batterby氏)

2.政府機関とレギュレーションを構築する

設立当初から経営が順調であったかのように思えるRatesetterであったが、顧客との信用構築という面では政府機関と協力してレギュレーションの構築にも努める必要があった。

「設立当初は、P2Pレンディングのレギュレーションがありませんでした。設立から数年間たつと業界内でレギュレーションの重要性が認識され始め、政府にレギュレーション構築のイニシアチブをとる方向へ話を進めていきました。もともとは小さなビジネスだったため、お客様を説得するのが難しかったです。キャンペーン活動を行いながら、お客様を安心させるレギュレーションを準備していきました。その後、政府機関がレギュレーションをレビューし、協同関係を続けてきました。現在では、銀行の普通預金がクラウド投資(P2Pレンディング)につながっています。それにより、より多くの投資家の参加を促せるようになりました。これはレギュレーションを構築しなければできなかったことでしょう。金融の分野では誰も関与していませんでしたが、長い目で見ればポジティブな変化だったと思います。」(Batterby氏)

政府機関と言えば保守的なイメージが強いかもしれないが、英国では新しいレギュレーションの構築活動が活発なのだろう。世界的にもPeer to Peer Lendingには未だに不安が残る面があるが、英国ではイノベーションの素地がRatesetterを後押ししている。投資家や借り手にとってはオプションが増え、今後はさらに金融セクターの競争を促すことになるのかもしれない。

3.リスクマネジメントへの取り組み

「当社ではProvision Fundというコンセプトを作りました。投資家への返金を保証する金融プラットフォームで、当社ではこれがシステムの手助けとなっています。もしローンが失敗して借り手が返済できなければ、Provision fundが投資家に返金するシステムです。これにより、投資家は貸付のリスクマネジメントが可能となります。1人や2人の借り手しかいないポートフォリオでは、彼らが返金しなければ全てを失う可能性がありますが、Provision Fundのプラットフォームで250,000人の資金を準備していれば、1人が返済不能に陥っても全体で投資家への返金を保証できます。当社では自社のプロジェクトマネジメントシステムとウェブシステムを構築しています。Websystemも自社システム。このリスクマネジメントにより投資家のリスクが減り、将来の予測もできます。このProvision Fundはイノベーションの一つで、この実績を基に今後はリスクを軽減していけるでしょう。」(Battersby氏)

インタビュー後記

政府機関と協働して新たな金融レギュレーションに取り組み、投資家への保証システムを構築したRatesetter。P2Pレンディングのノンバンキング融資が広がっていけば、個人・法人のビジネスへ加速させる一石を投じる可能性もある。今後の展開にも引き続き注目していきたい。

取材日:2019年5月

取材・文章:hongou

編集:n.takai