2019
07.05

南アフリカ共和国の配送クラウドソーシング「Wumdrop」CEO「エンドユーザーのニーズを問い続ける」

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南アフリカ共和国の配送クラウドソーシング「Wumdrop」CEO「エンドユーザーのニーズを問い続ける」

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Wumdropとは、南アフリカ共和国で小売店と個人の顧客への配送を手掛けるクラウドソーシング企業である。2015年には南アフリカ共和国でアプリ開発の実績を評価され、「The MTN App of the Year Awards」で優勝している。人口密度が低い条件下で、ラスト・マイル・デリバリーの配送クラウドソーシングを成功させてきた要因は何だったのだろうか。

1.キャリアの転機

CEOのSimon Hartley氏は、学生時代にメディアを専攻。2013年にアフリカのニュースメディア記者として業務に従事し、数年後にはニュースの編集マネージャーを担当していた。ところが、2009年から2013年にかけてメディアを取り巻く環境は劇的に変わり、facebookなどのプラットフォームの台頭により、当時の上司は別のビジネスモデルを模索していた。自分はそのビジネスモデルに対して懐疑的だったこともあり、その時に自分のビジネスを立ち上げる時だと感じていた。

「当時は24,25歳で、ビジネスの経験はありませんでした。ビジネスの勉強もしていませんでしたし、理論も知りませんでした。ファイナンスの経験もありませんでしたが、それまでの経験を生かしたコンテンツは手元にありましたし、若さゆえになにも知らないことが強みだと感じていました。」(Hartley氏)

こう述べるHartley氏は、TV脚本のビジネスから手掛けた。当初は何もアイディアがなかったが、常に考えていたのは、一つはビジネスファイナンスのフォーマルトレーニングを受けていないこと、もう一つはスタートアップについても知らなかったということだった。

「良いTVスクリプトを書けば、プロデューサーに売ることができます。人気のあるライターになり、スクリプトを販売する天性の能力があったと感じたので、自信がありました。そこから“何が売れやすいか“と考え始めたわけです。棺とおむつの販売を始めたのはそれから間もなくのことでした。常に需要があるからです。資金はなく、商店や倉庫を借りることもできなかったため、オンラインでおむつの販売を始めました。インターネットの評判は上々でしたが、転機が訪れたのは南アフリカ共和国大手小売店のMassmartとの出会いでした。(Hartley氏)

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2.アフリカのラスト・マイル・デリバリー

南アフリカ共和国の人口密度(km)は41.4人、それに対して340.8人とされている(※1)。人口密度が低いため、アフリカではラスト・マイル・デリバリーの距離が非常に長い。南アフリカのケースでは8km~14kmに及ぶことから、発送してから目的地に届くまで最も経済的なルートを確保することが、配送業者にとって肝要となっている。

「当社では指定時間に配達していますので、お客様へは時間のサービスを提供しています。例えば、配達時間を指定できなければ、お客様は家で待ち続けなくてはいけません。乳幼児のいるご家庭にとってはそれが難しい時もあります。エンドユーザーにとって便利なサービスを提供できるかがポイントです。特定の場所・時間にエンドユーザーに配達し続け、平均で70%の正確性という評価を得ています。配達する都市もケープタウン、ヨハネスブルグ、プレトリアと広がっていきました。」(Hartley氏)

クラウドソーシングのプロジェクトマネジメントシステムは多岐に渡るが、Wumdropの特徴としては、14人のチームが自社のシステムを用いて、配送や顧客情報の管理を徹底していることである。

「当社には多くのドライバーが登録しています。ワークアイテムを広げながら、ソフトウェアによる自動化プロセスを通じて従業員数を最小限に保てるかどうかが課題でした。当社では14人のメンバーで管理しているので、それがソフトウェアの実績を示していると思います。コストを抑えて利益を生めるスタートアップのモデルとしては、アフリカでは稀です。AIも使っていません。しかし、ドライバーのクラウドを準備するだけでは十分ではありません。Wumdropの顧客は、小売店と個人が8:2の割合で分かれています。今後は配達のトラッキングを通じて地理的なルートを最適化し、小売店と協力してラスト・マイルをいかに縮められるかということに取り組みたいです。また、アフリカのクラウドソーシングビジネスの大きな課題は、犯罪歴など、事業登録者のバックグラウンド情報へインタビュー前にアクセスできるかどうかです。マーケットプレイスでは、登録者を事前に評価できるようにしたいと思っています。」(Hartley氏)

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3.エンドユーザーのニーズを問い続ける

「今後はインフォーマル居住区へのデリバリーサービスも視野に入れています。人口も多いので、マーケットの可能性も十分にあります。また、他国へも配送のシステムを広げたいと思っています。普段はWalmart Inc.の専門家から情報収集を続け、当社のチームで業界のトレンドを追うようにしていますが、大事なことはエンドユーザーの必要なものは何なのか?と問い続けることです。」(Hartley氏)

インタビュー後記

棺とおむつの販売から配送クラウドソーシングに至るまで、エンドユーザーのニーズを常に考えてきたHartley氏。Wumdropの将来は国をまたいだアフリカ全土を見越している。今後の展開にも引き続き注目していきたい。

取材日:2019年5月

取材・文章:hongou

編集:n.takai