08.30
CSの権威が予測する衝撃の未来 Vol.3
(8月29日-働き方探求メディア 瓦版-)
Contents
~静かに迫りくる巨大な黒船~ クラウドソーシング(CS)革命がもたらす破壊的創造(3)
クラウドソーシングの拡大で誕生する超流動化労働市場
在宅勤務やSOHOといったテレワーク(TW)は、多様な働き方をサポートするワークスタイルとして、日本でもその利用推進が後押しされてきた。
しかし、日本的発想では導入が困難なのか、思うように普及が進んでいない。現状では制度化された実施率は1割にも満たないという調査もある。
このテレワークは、ホワイトカラーの仕事の実に90%をまかなえると試算されている。そして、その全てをクラウドソーシングで実施できるといわれている。
それが何を意味するのか…。ズバリ、超流動化労働市場の誕生だ。
テレワークとクラウドソーシングの違いについて、東京工業大学イノベーションマネジメント研究科・比嘉邦彦教授は次のように説明する。
「今までのテレワークは会社に所属しているワーカーをベースにしたワークライフバランスや生産性の向上を図るモノだったのに対し、クラウドソーシングは、フリーランスをベースにしたものであり、企業にとっては純粋に経営効率を上げる仕組みである点が大きく異なります。」
クラウドソーシングが秘める恐るべき可能性
つまり、クラウドソーシングの拡大によって、社外人材を対象としたテレワークが一気に普及する可能性がでてくる。なぜなら、クラウドソーシングは外部リソースを活用した純粋に経営効率を上げる仕組みであり、利用における障壁がほとんどないからだ。
とはいえ、企業にとってクラウドソーシング活用の増大は、正社員に代わり、フリーランスを重用することにもつながり、正社員の居場所を狭くすることになる。そうした点が、テレワークが辿ったように、またしてもクラウドソーシング普及を阻害する要因になりかねない。その点について、比嘉教授はこう考察する。
「テレワークの普及は昔から望まれては来たが、遠隔で働く社員のマネジメントの問題などもあり、うまくいかなかった。しかし、リモートワークを行う環境も大きく進化したいまの時代に明らかに経営効率に優れるクラウドソーシングを使わないのは、今後の企業の存続を危うくしかねない。そうまでしてクラウドソーシングを活用しない理由は見当たらないのではないか」。
企業にとって、クラウドソーシングはパンドラの箱ではない。むしろ、魔法のランプになり得るものである。しかし、旧来の会社のあり方を大きく変える可能性を秘めるだけに、拒絶反応が起こる可能性も高く、そう簡単には手出しできない側面もある。このジレンマこそが、クラウドソーシングが秘める恐るべき可能性を示しているといえるだろう。
<次回第4回(9月上旬)はクラウドソーシング普及における課題とは>
第1回:クラウドソーシングの本当のすごさとは
第2回:クラウドソーシング先進国アメリカの活用事例
<東京工業大学 比嘉邦彦教授 プロフィール>
米国アリゾナ大学から1988年に経営情報システム専攻でPh.D.を修得。以来、同大学講師、ジョージア工科大学助教授、香港科学技術大学助教授を経て1996年に東京工業大学経営工学専攻助教授に、1999年より同大学理財工学研究センター教授。テレワークおよびクラウドソーシングをメインテーマとして、組織改革、地域活性化、e-コマースなどについて研究。それらの分野における論文を国内外の学術誌や国際会議などで多数執筆・発表。企業へのテレワーク導入ガイドブックの編集委員長、テレワーク推進フォーラム副会長を含めテレワーク関係省庁の各種委員会の委員および委員長を歴任。
(-働き方探求メディア 瓦版-)