08.08
クラウドソーシングの衝撃、著者・比嘉氏「クラウドソーシングにJAPANブランドを」
Contents
「クラウドソーシングの衝撃」
~クラウドソーシングの衝撃、著者・比嘉邦彦氏に訊く~
クラウドソーシングとは…
インターネットを介して不特定多数のクラウド(crowd:群衆)にアクセスして必要な人材を調達する仕組みである。また、2013年現在海外では、官民を問わずクラウドソーシングを戦略的に活用する動きが加速しており、市場規模も倍々ゲームで拡大し続けている。
(「クラウドソーシングの衝撃」より引用)
2013年6月に発売された「クラウドソーシングの衝撃」(以後、本書籍)。これまで、海外を中心にクラウドソーシングの書籍は発売されているが、世界的に見てもこのこれだけ全体を俯瞰したものとしては、非常に珍しい一冊と言える。
今回は、著者である比嘉邦彦氏に、出版の動機、今後のクラウドソーシング業界の展望などインタビューする。
(Interview:n.takai、Writer:m.morita)
クラウドソーシングは経営資源に対する『黒船』
現在、世界規模でクラウドソーシングが成長し注目されています。
まずは、今回の『クラウドソーシングの衝撃』出版の動機を教えてください。
クラウドソーシングとは経営資源に対して開国を迫る「黒船」のような存在だと言えます。人が移動するのではなく、仕事が移動するという仕事の仕方に変化を与え、しかも気づかない状態で変化し、経営に影響を与えるものです。知っている会社は有効な手段として経営能力を高める一方で、知らない会社は従来の方法で競争するということになります。これは一般の人が気付くような段階で初めて取り組んだのでは手遅れになります。こうしたことが今世界中に起こりつつあり、この世界的な流れを「知らない」とか「無視」するということは、一番いけないことですよね。
本書では、クラウドソーシングの姿を正しく認識してもらって、個人であれば自分のキャリア形成、企業であれば経営戦略について考えるきっかけにしてほしいというのが出版の動機ですね。
次々と魅力的な事例が生まれる
書籍の中で、様々な調査や研究をされていますが、
執筆中の調査などで苦労された点はありますか?
まず言えることは、次々と新しい魅力的な事例が生まれているのでどこで切るか…という点が悩ましかったですね。見つからないというよりはこっちが驚くようなことばかりが出てくるので。中でもIBMの事例に衝撃を受けました。(※2012年2月のロイターの記事によると、ドイツIBMは8,000人分の仕事をプロジェクトごとにインターネットを介して人材を調達する、つまり、クラウドソーシングで調達することを計画している。という事例)
IBMの事例は他の会社が使っている戦略的なクラウドソーシングとは全く違った異質のもので、日本でもこの動きが広がるのではないかと心配したんですね。
そして、もう一つはクラウドソーシングの問題点やトラブルが意外と見つからないということ。あるはずなんですけど、出てこない。サイトを運営してる人たちに話を聞くと、あるんだけど本当に微々たるもので交通事故の確率より低いという話でしたね。
大企業は新規事業にクラウドソーシングを
どのような場面で企業はクラウドソーシングを活用できるでしょうか?
それぞれの立場で使い方が違うんですが、まず、大企業では新規事業に活用していくこと。ベンチャー・中小企業は自社のコア人材以外で不足している部分を補うということでしょうか。大企業は既存事業で使おうとすると、社内資源と競合して難しいでしょうから、新規事業で使い始めるのが現実的ではないかと思います。
中小・ベンチャー企業の自社資源不足を補うクラウドソーシング
ベンチャーや中小企業というのは、自社資源がないというのが今まで最大の欠点だったわけですよね。それをほとんどリスクフリーの投資なしで補えるというこんな夢みたいな話はないので、トライしない理由がわからないですね。とにかく日本の大企業の足下を崩すってことをやってほしいですね。ただ、今のところ英語でのコミュニケーションができるというのが最低必要条件になるので、そこはネックになるのかもしれないですね。
課題となる発注難易度
今後の課題としてどういったことが考えられるでしょうか?
大手サービス運営会社も言っていますけども、発注側の難易度でしょうね。クラウドソーシングで可能なものと発注の仕方という部分がもうちょっとしっかりしたものになると成約率が上がってくるとは思いますけども、これは難しいんですよね。企業から旨味のある発注がいっぱい出て来るようになれば、必然的に能力の高い人が集まって来て、日本のクラウドソーシングも次の段階に入って行くと思いますよ。
新しい就活のカタチ
今後クラウドソーシング業界を盛り上げるためにも、
どういった人たちが登録者として増えることを期待されますか?
登録者はデザイン系だけじゃなくて、近い将来、学生が就活を始める前にクラウドソーシングで希望の職種などを実体験して実績をつけるっていうのが必須になるんじゃないかなと思っています。意識改革にも繋がりますし、日本のクラウドソーシング人材の底上げにも繋がります。企業側もそれに気がついて、ある一定の量で仕事を出してくれると順調に業界が育っていくんだろうと思いますけども、なかなか難しいですよね。
クラウドソーシングにJAPANブランドを
今後クラウドソーシングの運営会社に期待することや、業界の動向について注目されている点について教えていただけますか?
業界を含めてALL JAPANっていう考えを持って欲しいなと思いますね。
いろんな製造業とかサービス業の先駆者たちの努力のおかげで世界的に日本っていうと高品質っていうイメージがついているわけですよね。
責任を問われる時代がそこまで来ているということをみなさんがちゃんと認識してほしいということですね。どこかの大企業や官公庁に入れば安泰だという時代はもう終わりですよね。ぜひ業界全体で有力な発注側も一緒になってブランド化(つまり、日本のクラウドソースは高品質)を進めてほしいですね。
「クラウドソーシングの衝撃」
著者:比嘉邦彦、井川甲作
小売希望価格: 印刷書籍版 1,890円(税込)/電子書籍版 1,323円(税込)
印刷書籍版仕様:A5判/モノクロ/本文180ページ
電子書籍版フォーマット:EPUB3/Kindle Format8
ISBN:978-4- 8443-9585-0
発行:インプレスR&D
発売:インプレスコミュニケーションズ