2013
12.09

Quirky|共創型クラウドソーシングの海外事例(1/3)

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Contents

全ての製品を、消費者コミュニティとの共創によって生み出す。

(writing k.aoki)

1.      “A Socially Developed Product

Quirkyの「我々は21世紀のProcter & Gamble社になる。すなわち、この先100年のトップ消費財メーカーを目指す」と宣言する企業がある。2009年にニューヨークで誕生した、Quirky社(http://www.quirky.com/)である。

Quirky2
(出所:Quirky HP)
同社は“We Make Invention Accessible”を掲げ、当時22歳のBen Kaufmanによって設立された。全ての製品を、消費者コミュニティとの共創によって生み出して、全貢献者に金銭的インセンティブを付与するという特長的なビジネスモデルを構築し、成長を遂げている。
Quirkyの商品は、PC・iPhone周辺製品やキッチン用品などであるが、どれも日常生活におけるちょっとした問題を解決するアイデア商品である。日常生活の問題を最もよく知るのはユーザーであり、彼らは問題解決者として優れたアイデアを持っているというのがKaufmanの持論である。世界中で眠っているアイデアを集めて、その中からベストアイデアを市場に投入するというビジネスモデルは、消費財の製造業に一石を投じることができると確信し、Kaufmanは事あるごとに冒頭の発言を繰り返している。

Quirkyの製品開発は、ユーザーからアイデアが投稿されるところから始まる。

新製品のアイデアが、それが「身の回りのどんな問題を解決するものか」という説明、簡単なイラストやスケッチなどを添えて投稿される。アイデアはまずコミュニティで評価され、次のステップに進めるべきか否かの投票が行われる。毎週1,500程度のアイデア(2013年5月時点の情報)が、コミュニティで10-15アイデアにまで絞られる。上位アイデアのみが、Quirkyスタッフの評価を受け、次の開発過程に進むかどうかが決定される。開発過程に進んだアイデアは、コミュニティの中でリサーチやデザイン、ブランディングなどの過程を経て、最終形になる。その後は、Quirkyスタッフによるプロトタイプの制作や最終調整を経て発売に至る。
つまり、たくさん投稿されてくるアイデアからコミュニティで原石を見出し、Quirkyの専門家たちと協業しながら、最終商品へとブラッシュアップしていくのである。この一連の開発過程を経て生まれた商品を、Quirkyでは“A Socially Developed Product”としている(図1)。
図 1  A Socially Developed Product ™ (出所:Quirky HP)

下記、図2はQuirky最大のヒット商品、Pivot PowerのBefore/Afterである。電源タップの差込口を等間隔に固定するのではなく、フレキシブルに変えられるようにすることで、大きさの違う充電器なども同時に差し込めるという商品である。2つの画像を比べれば、投稿時のアイデアがコミュニティでの開発過程を経ることで、別のものへと形を変えていることが見て取れる。まさに共創活動の成果である。

図 2  2010年4月17日投稿時(左)と2011年5月11日発売時(右)のPivot Power(出所:Quirky HP)

 

writer

青木 慶(あおき けい)
外資系メーカーマーケティング職の一方、2012年~神戸大学大学院経営学研究科博士後期課程。研究テーマは、企業と消費者の価値共創